2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
衛生学教室
教授:大槻剛巳


教育重点および概要

 2010年度に医大に対しての授業担当は,新カリキュラムへの移行の関係で存しない。ただし,新カリキュラムが4年次に進む段階で,我々の教室はいわゆる社会医学系の統合されたプログラムに入る予定である。そこには,公衆衛生学,健康管理学,保険医療論,予防医学,中毒学等々が配置され,一層理解が良好になるようにと鋭意工夫していきたいと思っている。また,2009年度まで保険・医療ブロックの中で実施していた7箇所の学外施設に見学実習も継続する予定である。地域保健,感染症対策,疾病が元となって社会的政治的弱者となった方々の施設,老人保健,労働衛生,健康増進対策,国民栄養などの観点から,百聞は一見に如かずの言葉通り,現場を将来医師となる身として観ることでその実態を把握し,また,主には個人個人に与えられた当該施設に合致した課題に合わせてレポート提出も実施している。これらのレポートや感想についても,インターネットを介した提出のみとし,提出期限終了後は,見学先の施設の方にもインターネットを介して閲覧していただけるように設定している。このように2010年度からの社会医学統合ブロック講義に向けて,2010年度は,しっかりとした準備期間となる。

○ 自己評価と反省

 担当する領域を,割り振られた時間の中で,いかに工夫を凝らして学生諸子に医学医療の面白さ,醍醐味を伝えることが出来るのか,ということに腐心している訳だが,なかなかに,道遠しという現実もある。発想を豊に自由にし,自らを見つめること,そして創意工夫に努力することによって,今後とも将来の試験に合格するためというのも勿論であるが,医科学に対する興味を惹起できるように教室員一同精進したい。

研究分野および主要研究テーマ

 研究は教室として「環境免疫学」を実施しており,中でも「珪酸・アスベストの免疫影響」をその中心に据えている。このテーマは前任の植木絢子教授の頃より行っているもので,クボタショック以来の本邦でのアスベスト禍に関連した医学医療の関心の集中の以前より鋭意努力している処である。現在は,科学技術振興調整費平成18年度採択課題(重要課題解決型研究等の推進)として「アスベスト関連疾患への総括的取り組み」として努力しており,平成20年度には中間審査もB評価を頂戴し,2010年度終了に向けで努力している。また,いくつかの科学研究補助金の採択も得ている。また,ここ数年前後で住友財団環境研究助成(大槻),安田記念医学財団癌研究助成(大槻),武田科学振興財団特定研究助成[Ⅰ](大槻:愛知県がんセンターと名古屋大学との共同研究),川崎医学・医療福祉学振興財団研究助成(西村講師,前田助教,熊谷助教),両備てい園研究助成(前田助教,熊谷助教)に採択していただき,加えて,第18回日中韓産業保健学術集談会Most Scientific Poster Awarid(西村講師),2007年度農芸化学会中四国支部奨励賞(前田助教),第78回日本衛生学会総会会長賞(若手から選択:西村講師,熊谷助教),The 9th International Conference of the International Mesothelioma Interest Group:Young Investigators Awards(日本人初:西村講師),第16回日本免疫毒性学会学術大会奨励賞(西村講師)を受賞するなど,評価もされてきていると考えている。加えて,2009年7月には第18回日本臨床環境医学会学術大会も主催出来,盛会裏に終了することができた。これらの活動を通じて,研究に精進したいと考えている。

○ 自己評価と反省

 上記のごとく,我々の研究については,一定の評価は得てきているとは考えられるが,最終的に論文発表をすることによって研究の国際貢献が成されると考えるため,その努力をこれまで以上に講じていかなければならないと考える。

将来の改善方策

 教育・研究両面で,基本的には厳しい自己評価と改善に向けた創意工夫,そして弛まぬ努力に尽きると考える。そして医科学研究である以上,今,この一瞬の実験が,あるいは,教育課程の中での一言ひとことが,現在のあるいは近い(もしくは遠い)将来の健康障害を有する人々への福音になるべきものであらねばならないということを片時たりとも忘れないように心がけることが必要であろうと考える。